2019/09/30
今日は「再び1200ラインを突破!!今度はだれも助けぬ一人旅」についてお伝えしたいと思います。
1200ライン再び突破
9月30日朝の時点でドルウォンレートは1ドル1199ウォンと一時戻しましたが、9月下旬に入り節目と言われている1200を割り込むなど、不穏な雰囲気を見せ始めています。米中貿易戦争の煽りを受けて、7月終わりから一気に暴落していたウォンですが、ドル自体の弱含みや日本の輸出管理による影響が目に見えないこともあり、9月初旬からは1200を回復、中旬までには1180に達しました。
潮目が変わってきたのは、9月13日頃、さらに9月20日に景気後退が24ヶ月続いてきたとの統計の公表を受けたあたりから、下落傾向が続いています。韓国の国家統計委員会は20日、文政権の発足直後の2017年9月を山の頂点にして、景気後退局面に入ったと指摘、すでに24ヶ月が経過、今後改善がみられなければ、IMF危機となった1996年3月~1998年8月の29ヶ月間という過去最長記録を更新する可能性を指摘していました。先日の動画で紹介したサムライ債の発行に失敗したとの報道などの悪材料も影響していると思われます。
2年半ぶりの最低値
22日に発表された国際決済銀行(BIS)の集計によると、総合的な通貨の実力を示す数値である8月のウォンの「実質実効為替レート指数が105.05」で、2016年2月の104.82以来、2年半ぶりに最も低くなりました。
「実質実効為替レート指数は貿易相手国に対する各国の通貨の実質価値を表す指標」で、貿易相手国の通貨価値と物価を考慮した同指数が下落するのは当該国の通貨の実質価値が下落することを意味し、輸出には有利に働くものの、対外的な購買力が低下することにつながります。
実質実効為替レート指数は、昨年9月の114.74を頂点として下落傾向が続いていて、特に、貿易をめぐる米中の対立が激化し始めた今年4月の110.13以降、下落傾向が急速に進み、最近4カ月間で5ポイント以上下落し、今年8月の105.05まで8.5%下がったことになります。
1997年末の通貨危機の時で、1997年8月の121.94から1998年1月には72.33へと40.7%下落、2008年のリーマンショック時は35.3%と、危機的状況から比べると少ないのですが、きっかけになる可能性が懸念されます。
IMFはない
1997年、韓国は国際通貨基金(IMF)の支援を受け、2018年の通貨危機を乗り切ったとされていますが、細かく見てみると、IMF支援のみでは韓国の景気状況は回復をみずに翌年の通貨危機に突入、その際、日米欧、なかでもとりわけ日本の支援により、韓国は通過危機を脱しました。タイバーツの暴落の直後、1997年7月に韓国の起亜自動車が破綻したことがきっかけとなり、韓国はIMFに支援を要請。IMFから210億ドル、世界銀行から100億ドル、アジア開発銀行から40億ドル、そして第二線準備として、日本からの100億ドルを合わせた230億ドルの支援枠組みが決定されました。
逆にIMFへの支援要請と効果の実効性への不信から市場の不安をあおる結果となり、2017年12月11日に1ドルあたり1719ウォンまで急落。翌12日に日本から118億ドル、欧州全体から118億ドル、アメリカから42億ドルの短期債務繰り延べ交渉を行うことで、なんとか危機を脱しました。
当時から経済危機に瀕した韓国に対する日本の支援は手厚かったのですが、現状の日韓関係を考えると万一の際にも金融支援を行う環境にはないと感じます。IMFの現在の出資割合を考えると米国が17.26%で1位、2位が日本6.48%となっていて、日米の支援どころかIMFの支援についても、見込める状況にないことが分かります。
ますます高まる危険性
IMFは今年3月にも、韓国政府との年次協議の結果、韓国経済に逆風が吹く恐れがあるとし「大規模な追加予算が必要で、国内総生産(GDP)の0.5%、つまり昨年の名目GDP基準で約9兆ウォンを超えることが望ましい」と警告していました。9兆ウォンは昨年の追加予算の2.3倍に達する規模となっています。
IMFはこれまでにも数回、年次協議で財政拡大を勧告してきましたが、具体的な規模を提示したのは今回が初めてです。この理由については「世界景気が急激に減速する中で、韓国経済が輸出減少と雇用不足、家計負債という逆風を同時に受ける恐れがある」と説明しました。
韓国政府は現在、大気汚染対策のための追加予算を検討しているようで、記事は「輸出と雇用の指標が回復しなければ、経済状況まで考慮して追加予算の規模を増やす可能性がある」と指摘しています。IMFの介入を許せば、緊縮財政や金融機関のリストラ、企業ガバナンスの透明化など、内政執行に大きな制限をうけることにもなり、韓国政府としてはできれば世話になりたくないと考えているでしょう。
ただ、日本を始め各国に対して、恩をあだで返すことをしているともしものときに誰からも支援されず、孤独で危険な一人旅になってしまうかもしれませんね?
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